女性関連の法改正を組織の力に変える具体策

近年、女性活躍推進に関連する法改正が相次ぎ、企業で労務を担当する方々にとっては、その対応に日々頭を悩ませているかもしれません。

しかし、これらの法改正は、単なる義務として受け身で対応するだけでなく、企業の成長と持続的な発展を促すチャンスと捉えることもできます。

例えば、今回の女性活躍推進法改正への積極的な対応は、優秀な人材の確保従業員の定着率向上、さらには企業イメージの向上ブランド力の強化にもつながり得ます。

本記事では、2026年4月に施行された女性活躍推進法改正の主要ポイントから、実務で役立つ4ステップの対応フロー、そして法改正を戦略的に企業価値向上につなげるための3つの視点まで、詳しく解説していきます。この記事を通して、法改正への不安を解消し、貴社がより魅力的で働きがいのある組織へと変革するための一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

女性活躍推進法改正を組織の力に変える具体策

なぜ今、女性活躍推進法改正への対応が「企業価値」に直結するのか?

女性活躍推進法は、女性の職業生活における活躍の推進に関する取り組み等を進めるための法律です。近年、女性活躍推進法の改正が進められていますが、これは単に「法律だから対応しなければならない」という義務感だけで終わらせるべきものではありません。むしろ、これらの法改正は企業が持続的に成長するための重要な戦略のひとつと捉えることができます。

日本の少子高齢化は深刻化しており、労働人口の減少は避けられない現状です。このような状況下で企業が成長を続けるためには、多様な人材、特にこれまで十分に活躍の機会が提供されてこなかった女性の力を最大限に引き出すことが重要といえます。

法改正への対応は、企業の採用競争力向上にも関わります。多様な働き方を許容し、女性が長期的にキャリアを形成できる環境が整っている企業は、求職者にとって非常に魅力的ではないでしょうか。これは優秀な人材の獲得だけでなく、従業員の定着率向上にも寄与します。
また、性別に関わらず誰もが働きやすい環境は、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、結果として生産性の向上にもつながるでしょう。従業員が安心して長く働ける企業は、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献すると考えられます。

さらに、法改正への対応は、ESG経営の観点からも重要視されています。ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取ったもので、投資家や金融機関が企業を評価する際の基準のひとつとなっています。

女性活躍推進への取り組みは、S(社会)の要素として評価されることがあり、資金調達の面でも有利に働く可能性があります。加えて、顧客や社会全体からの企業のブランドイメージ向上にもつながり、企業の信頼性と競争力を高めることにも貢献するといえるでしょう。

【2026年4月施行】押さえておくべき女性活躍推進法改正の3大ポイント

2026年4月に施行された女性活躍推進法の改正は、人事担当者にとって実務に直結する重要な変更を含んでいます。今回の改正では、特に押さえておくべきポイントが3つあります。情報公表義務の拡大女性の健康への配慮の明確化、そしてえるぼし認定の基準見直し等です。

これらの改正は、単なる法令遵守にとどまらず、企業の採用力強化、従業員の定着率向上、ひいては企業価値向上へとつなげるチャンスでもあります。このセクションでは、各ポイントの概要を簡潔にご説明し、それぞれの詳細と具体的な対応策について解説いたします。

企業規模
(常時雇用する労働者)
一般事業主行動計画の
策定・届出
情報公表する
義務項目
301人以上 義務 4項目以上の公表が必要
1 :男女間賃金差異
2 :女性管理職比率
3 :選択項目(機会提供から1つ)
4 :選択項目(環境整備から1つ)
101人以上300人以下 義務 3項目以上の公表が必要
1 :男女間賃金差異
2 :女性管理職比率
3 :選択項目(全項目から任意の1つ)
100人以下 努力義務 努力義務

ポイント1:情報公表義務の拡大(男女間賃金差異・女性管理職比率)

今回の女性活躍推進法改正で、人事担当者様にとって実務的なインパクトが大きいと思われるのが「情報公表義務の拡大」です。これまで、常時雇用する労働者が301人以上の企業については、男女間賃金差異の公表が義務付けられていました。今回の改正により、301人以上の企業については、新たに女性管理職比率も必須公表項目となりました。

また、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主についても、男女間賃金差異および女性管理職比率が新たに必須公表項目となりました。これにより、中堅規模の企業にとっても、数値の把握・算出・公表に向けた実務対応がより重要になります。

具体的に公表が必要となる「男女間賃金差異」については、全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3つの区分ごとに、男女それぞれの平均年間賃金を算出し、その差異を公表する必要があります。これらの情報は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページなどを活用して、外部から誰でも閲覧できる形で公表しなければなりません。

また、「女性管理職比率」も情報公表が義務付けられます。「女性管理職比率」の算出における「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」の合計を指します。一般的に「課長代理」や「課長補佐」は、当然に課長級に含まれるわけではないため、自社の役職体系に照らして、対象者を適切に整理する必要があります。

これらの情報は、求職者や投資家、顧客といった外部ステークホルダーから、企業のジェンダー平等への取り組み状況を判断する指標のひとつとなります。単に情報を公表するだけでなく、必要に応じて数値の背景、要因分析、今後の改善方針などをあわせて説明することで、より実態に即した情報発信に繋げることができます。

ポイント2:「女性の健康上の特性」への配慮の明確化

今回の女性活躍推進法の改正では、女性の活躍の推進は、女性の健康上の特性に留意して行われるべきことが法律上明確化されました。これは、月経困難症、不妊治療、更年期障害といった女性特有の健康課題が、仕事のパフォーマンスやキャリア継続に影響を与える可能性があるという認識に基づいています。

企業に求められる具体的な取り組みとしては、 管理職や全従業員を対象とした「ヘルスリテラシー向上のための研修」を通じて、女性の健康に関するリテラシーを高めることが重要になります。他にも、女性従業員が健康に関する悩みを相談しやすい体制を整えるための「相談窓口の設置」が挙げられます。不調を抱えながら無理に働き続けることを防ぎ、早期の対応に繋げることが重要です。

次に、「休暇制度の柔軟な運用」も考慮すべき点です。特別休暇や時間単位休暇など、健康状態に応じて利用しやすい制度を導入することで、通院や体調不良時の休息をとりやすくし、安心して働ける環境を整備します。

さらに、産業医や外部の専門家との連携を強化し、必要に応じて専門的なサポートを受けられる体制を構築することも有効です。このような制度設計と、すべての従業員が理解し支え合う風土醸成の両面からアプローチすることで、女性が長く、いきいきと働き続けられる職場環境を実現することが期待されます。

もっとも、健康に関する情報は従業員のプライバシーに深く関わるため、本人の意思に反した申告を求めないこと、相談内容の共有範囲を限定すること、相談や制度利用を理由とする不利益取扱いを防止することなど、情報管理と運用面にも十分な配慮が必要です。

ポイント3:えるぼし認定・プラチナえるぼし認定に加え、えるぼしプラス認定 と プラチナえるぼしプラス認定も

厚生労働省が行っている、女性活躍推進に関する取り組みが優良な企業を認定する「えるぼし認定」および「プラチナえるぼし認定」について、今回の改正では、えるぼし認定1段階目の基準見直しが行われました。これにより、改善傾向にある企業を評価する新たな選択肢が示され、継続的に女性活躍推進に取り組む企業にとって、認定取得を目指しやすくなることが期待されます。

また、職場における女性の健康支援に取り組む優良な企業を認定する新しい制度として「えるぼしプラス認定」と「プラチナえるぼしプラス認定」が創設されました。

「えるぼし認定」は、女性の採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースの5つの評価項目で、一定の基準を満たした企業が認定を受けられる制度です。認定を取得することで、企業のイメージ向上に加えて、公共調達での加点や日本政策金融公庫の低利融資制度の利用など、さまざまなメリットを享受できる場合があります。

「えるぼしプラス認定」および「プラチナえるぼしプラス認定」は、従来のえるぼし認定・プラチナえるぼし認定に、女性の健康支援に関する基準を加えた制度です。女性活躍推進に関する取り組みだけでなく、職場における女性の健康支援にも積極的に取り組んでいることを対外的に示す手段として活用できます。

もっとも、これらの認定の取得には所定の基準を満たす必要があります。認定取得を検討する場合には、自社の現状を確認したうえで、必要な取り組みや不足している項目を整理し、計画的に準備を進めることが重要です。

ここまで、2026年4月施行の法改正の要点をまとめてみました。

次は、これらのポイントを押さえ、対応を進めるためのステップを具体的にご紹介します。

法改正対応を4ステップで進める実践ロードマップ

女性活躍推進法改正への対応は、多忙な人事担当者様にとって大きな課題かもしれません。しかし、これらの法改正は単なる義務ではなく、組織をよりよく変革し、企業価値を高める機会でもあります。

「女性活躍推進法改正を組織の力に変える具体策」として、法改正への対応を体系的かつ効率的に進めるための具体的な手順を4つのステップでご紹介します。

各ステップは、単なる作業としてではなく、自社の課題解決につながる一連のプロセスとして捉えることで、より実効性の高い成果を生み出すことができます。

このロードマップを通じて、女性活躍推進に向けた取り組みを確実に前進させ、社員と会社双方にとって望ましい未来を築くための具体的な方法を、詳しく解説していきます。

ステップ1:現状把握と課題分析 – 正確なデータが第一歩

法改正への対応と女性活躍推進の出発点は、自社の現状を正確に把握することです。

まずは「採用者に占める女性比率」「男女の平均継続勤務年数の差異」など、自社の現状を把握するためのデータを収集します。特に2026年4月施行の改正により、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主についても、「男女間賃金差異」や「女性管理職比率」の公表が義務付けられました。そのため、対象となる企業では、数値の算出方法を理解し、必要なデータを整理しておくことが重要です。公表対象となる情報については、自社ホームページや厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」などでの公表が求められます。

収集したデータは、部署別・役職別・勤続年数別などの切り口で分析し、「なぜこの数値なのか」を検証することが重要です。例えば、女性管理職が少ない理由や、育児期の離職傾向など、数値の背景にある課題を把握することで、自社に合った施策を検討しやすくなります。

ステップ2:行動計画の策定 – 実効性のある目標設定

現状分析で明らかになった課題をもとに、「一般事業主行動計画」を策定します。行動計画は単なる義務対応ではなく、自社の課題解決に向けた具体的なロードマップとして位置づけることが重要です。

目標設定では、「女性管理職比率を〇%向上させる」といった定量目標と、「仕事と育児・介護の両立支援を強化する」といった定性目標の両方を設定し、それぞれに具体的な施策を紐づけます。

例えば、女性管理職比率向上を目指す場合は、女性リーダー育成研修やメンター制度、キャリアパスの明確化などが考えられます。両立支援では、短時間勤務制度の拡充や柔軟な働き方を促進する制度整備などが有効です。

また、目標設定には、達成可能でありながらも少し背伸びをするような「ストレッチな目標」を設定することが、組織全体のモチベーション向上につながります。そして、この目標設定には、現場の管理職も巻き込み、彼らの意見を反映させることで、計画の実行可能性を高め、主体的な取り組みを促すことができるでしょう。

ステップ3:情報公表と届出 – 「守り」から「攻め」の広報へ

策定した一般事業主行動計画については、労働局への届出を行うとともに、社内外に周知・公表する必要があります。

社内では、イントラネットや掲示などで計画を共有し、従業員が制度を活用しやすい環境を整えます。社外に向けては、自社ホームページや「女性の活躍推進企業データベース」への掲載など、適切な方法で情報公表を行います。

情報公表は法的義務であると同時に、企業の魅力を発信する機会でもあります。男女間賃金差異や女性管理職比率などの数値だけでなく、それに対する課題認識や改善への取り組みもあわせて発信することで、求職者や顧客、投資家からの信頼獲得につながる可能性があります。
特に採用活動では、女性が活躍しやすい環境を客観的なデータで示すことが、企業の魅力を伝える材料になります。

ステップ4:社内周知とPDCA – 制度を形骸化させないために

制度や行動計画は、運用されなければ成果につながりません。そのため、継続的な社内周知とPDCAサイクルの運用が不可欠です。

まずは管理職を含む全従業員へ制度の目的や内容を丁寧に説明し、理解と協力を得ます。管理職は制度活用を促す重要な役割を担うため、特に理解促進が重要です。

また、目標達成状況を定期的に確認し、従業員アンケートやヒアリングを通じて利用状況や課題を把握します。その結果をもとに施策を見直し、改善を継続することで、制度を実効性のある仕組みへと育てることができます。

法改正を組織の力に!企業価値を高める3つの戦略

女性活躍推進法改正への対応は、単なる法令遵守ではなく、企業価値向上の機会として活用できます。

戦略1:「えるぼし認定」を活用し、採用力とブランドイメージの向上につなげる

えるぼし認定は、女性活躍推進に関する取り組みが優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。

認定マークを採用サイトや求人広告に掲載することで、「女性が活躍できる企業」であることを客観的に示すことができます。また、公共調達での加点評価や融資面での優遇措置など、経営面で活用できる制度もあります。

さらに、今回の改正では、女性の健康支援に取り組む企業を評価する「えるぼしプラス認定」や「プラチナえるぼしプラス認定」も創設されています。認定取得を検討する場合には、自社の現状や認定基準を確認し、必要な取り組みを計画的に進めることが重要です。

戦略2:女性の健康課題への支援で、働きがいと生産性を高める

法改正では、女性の健康上の特性への配慮が明確化され、行動計画策定指針にもその視点が盛り込まれました。
月経困難症、不妊治療、更年期障害などに対する相談体制の整備や柔軟な働き方の提供は、離職防止やキャリア継続支援につながります。

もっとも、健康に関する情報は従業員のプライバシーに深く関わります。そのため、本人の意思に反した申告を求めないこと、相談内容の共有範囲を限定すること、相談や制度利用を理由とする不利益取扱いを防止することが重要です。

こうした取り組みは、従業員のエンゲージメント向上と、組織全体の生産性向上にも貢献する可能性があります。

戦略3:管理職の意識改革で組織風土を変える

制度整備だけでは十分ではありません。管理職がアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を理解し、多様な働き方やキャリア形成を支援できるようになることが重要です。
管理職が率先してダイバーシティ&インクルージョン(多様性を受け入れ、個々の能力を最大限に発揮させる考え方)を推進することで、誰もが能力を発揮できる職場環境づくりにつながります。

    

経営層・管理職・従業員を巻き込むポイント

経営層向け

経営層に対しては、法改正対応を「コスト」ではなく「未来への投資」として説明することが重要です。人材確保、離職率低下、ESG評価向上など、企業価値向上との関連を具体的に伝えましょう。

現場管理職向け

現場管理職に対しては、具体的な事例とメリットを示し、「自分ごと化」を促すことが重要です。女性活躍推進がチームの安定運営や人材育成、業務効率化にもつながることを伝えることで、前向きな協力を得やすくなります。

また、相談窓口や運用ルールを整備し、対応に迷ったときの判断基準を示すことで、管理職の負担軽減を図ることも大切です。

全従業員向け

全従業員に対しては、制度の目的や利用方法を分かりやすく周知し、透明性の高い情報共有を行います。また、「女性だけのための制度」ではなく、誰もが働きやすく能力を発揮できる職場づくりであることを丁寧に伝える必要があります。

男性従業員や特定の女性以外の従業員に「自分には関係ない」と受け取られないよう、コミュニケーションには細心の注意を払う必要があります。性別にかかわらず、誰もが働きやすい職場を作るための取り組みであるというメッセージを明確に伝え、「すべての従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境を整備する」という視点で広報することが、従業員全体の納得感と参画意識を高めるうえで非常に重要になります。

   

まとめ:法改正は、多様な人材が輝く組織への変革のチャンス

女性活躍推進法改正への対応は、単なる法令遵守ではなく、企業が組織力を高めるための機会でもあります。

適切な対応は、採用競争力の向上、人材定着、従業員エンゲージメント向上、企業価値向上につながり得ます。特に人事担当者の皆様は、この変革を推進する重要な役割を担っています。

法的リスクを管理しつつ、本記事で紹介したステップや戦略を実践することで、社員と会社の双方にとってよりよい職場づくりにつなげることができます。法改正を前向きに捉え、貴社が多様な人材の力を最大限に発揮できる組織へと進化できるよう、できるところから取り組みを進めていきましょう。

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弁護士法人シーライト

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