いわゆる問題社員による無断録音への対応策

近年は、録音機器の小型化・高性能化が進み、胸ポケットやバッグに入れても気づかれないほどの小さなICレコーダーや、スマートフォンアプリを利用した長時間録音などが容易になりました。中には、1日中録音し続けられる機器もあり、本人が録音していることに周囲がまったく気づかないケースも少なくありません。

こうした状況を背景に、職場での会話や上司との面談、同僚とのやり取りを無断で録音する社員への対応に悩む企業が増えています。

増加する従業員の「無断録音」その背景と法的リスク

スマートフォンや小型ICレコーダーの普及により、誰もが簡単かつ高音質で会話を記録できるようになりました。このテクノロジーの進化が、職場における無断録音トラブルの増加につながっています。
特に、勤務態度や服務規律に課題のある従業員、いわゆる問題社員との面談・指導の場面では、会話が録音され、後日の交渉や訴訟で利用されることがあります。

こうした行為は、職場の信頼関係に影響を与えるだけでなく、他の従業員のプライバシー侵害や職場のモラル低下、会社の秘密情報の漏えいにつながるおそれもあります。
もっとも、従業員による録音が常に違法・不当と評価されるわけではありません。ハラスメントや退職勧奨、不利益取扱いなどが問題となる場面では、自己の権利を守るための証拠保全として録音が行われることもあります。

そのため、会社としては、録音行為を一律に敵視するのではなく、録音の目的、態様、利用方法、業務への影響、他の従業員や顧客情報への影響などをふまえ、法的な要件を満たした適正な手順で対応することが重要です。

社員はなぜ無断で録音するのか?その心理とは

無断録音を行う社員の背景には、上司からの指導や会社の対応について不安や不信感を抱き、自分の発言や会社側の説明を後から確認できるようにしておきたいという心理があることがあります。
また、ハラスメントや退職勧奨、不利益取扱いなどが問題となる場面では、自己の権利を守るための証拠を残したいという目的で録音が行われることもあります。

一方で、業務上の必要性がないにもかかわらず、日常的な会話や他の従業員とのやり取り、会議内容などを無断で録音し、これを社外に持ち出したり、第三者に共有したりする場合には、職場秩序や情報管理の観点から問題となり得ます。

無断録音の音声は法的に有効な証拠になる?

労働裁判や労働審判の実務においては、無断で録音された音声データであっても、それだけで当然に証拠能力が否定されるわけではありません。録音の方法が著しく反社会的である場合や、他人のプライバシーを著しく侵害するような態様で取得された場合などは別ですが、自己の権利を守るために必要な範囲で録音されたものについては、証拠として提出されることがあります。

そのため、「無断で録音されたものだから無効だ」と一律に考えることはできません。むしろ、会社側としては、録音されている可能性を前提に、日頃から客観的事実に基づいた指導や、冷静で適正な面談対応を心がける必要があります。

無断録音トラブルを放置することで会社が被る3つのリスク

社員による無断録音の兆候があるにもかかわらず、具体的な対策を講じずに放置することは、会社にとって不利益をもたらす可能性があります。

【リスク1】他の従業員のプライバシー侵害と職場環境の悪化

「自分の発言が誰かに隠れて録音されているかもしれない」という疑念が職場内に広がると、従業員同士の率直な意見交換や日常的なコミュニケーションが萎縮するおそれがあります。
信頼関係に基づく円滑な協力体制が損なわれると、職場全体のモチベーション低下や、従業員の離職につながる可能性も否定できません。

【リスク2】訴訟に発展した際に不利な証拠として利用される

面談や指導の場面での発言が録音され、後日の紛争で証拠として提出されることがあります。
特に、上司が指導の過程で感情的になり、不適切な発言をしてしまった場合、その一部だけが切り取られて提出されると、発言の前後の文脈が十分に伝わらず、会社側に不利な事情として扱われるおそれがあります。

そのため、面談や指導の場面では、相手が録音しているかどうかにかかわらず、常に第三者が聞いても問題のない表現で、冷静かつ客観的に対応することが重要です。

【リスク3】会社の情報漏えいにつながる可能性

オフィス内での会話には、顧客の個人情報、新製品の開発計画、社外秘の経営数値など、多様な秘密情報が含まれていることがあります。

無断録音を行う社員がこれらの情報を社外に持ち出し、外部に漏えいさせたり、SNSなどで拡散したりするリスクは否定できません。特に、個人情報や機密情報を多く取り扱う業種では、未承認の録音機器による録音行為が、企業全体の社会的信用に影響を及ぼす重大な問題となる可能性があります。

無断録音への対応策その1:就業規則の整備と懲戒処分の根拠作り

社内の規律を維持し、無断録音をめぐるトラブルを予防するためには、感情論ではなく、「明確なルール」として就業規則や社内規程を整備しておくことが重要です。

なぜ就業規則への明記が必要なのか?

懲戒処分を行うためには、就業規則上の根拠規定を整備し、従業員に周知しておくことが重要です。
もっとも、就業規則に規定があれば常に懲戒処分が有効になるわけではありません。録音行為の目的、態様、業務への影響、秘密情報や他の従業員のプライバシー侵害の有無などをふまえ、処分内容が客観的に合理的で、社会通念上相当といえるかを慎重に判断する必要があります。

そのため、無断録音への対応では、単に「録音は禁止」と定めるだけではなく、どのような録音行為が問題となるのか、どのような場合に例外が認められるのか、録音データの持ち出しや第三者提供をどのように禁止するのかを、できるだけ明確にしておくことが大切です。

【記載例】服務規律に追加する無断録音禁止規定の文例

就業規則の服務規律や禁止事項に、以下のような規定を追加することが考えられます。
なお、以下はあくまで一般的な文例であり、実際に導入する際は、業種、業務内容、情報管理体制、既存の就業規則との整合性などをふまえて調整する必要があります。


第●条(録音・録画・撮影等の禁止)
従業員は、職務中または会社施設内において、業務上の必要性がある場合または会社が事前に承認した場合を除き、会社、顧客、取引先、役員、従業員その他関係者の会話、面談、会議、業務情報等を録音、録画または撮影してはならない。

2 前項にかかわらず、法令に基づく手続、公益通報、ハラスメント相談その他自己または第三者の正当な権利利益を保護するために必要かつ相当な範囲で行う行為については、この限りでない。

3 従業員は、録音、録画または撮影により取得した音声、画像、動画その他のデータを、正当な理由なく社外に持ち出し、第三者に開示し、漏えいし、または業務目的外に利用してはならない。

4 前各項に違反し、会社、顧客、取引先、役員、従業員その他関係者に損害を与え、または職場秩序を害した場合には、就業規則の懲戒規定に基づき、懲戒処分の対象となることがある。


このように、無断録音そのものだけでなく、録音データの社外持ち出し、第三者への開示、漏えい、業務目的外利用を明確に禁止しておくことが重要です。

一方で、公益通報やハラスメント相談、自己または第三者の正当な権利利益を保護するために必要な録音まで一律に禁止する内容にしてしまうと、従業員の正当な権利行使を萎縮させるおそれがあります。そのため、禁止規定を設ける場合でも、適切な例外を設けておくことが望ましいでしょう。

就業規則改定の手順と周知徹底の重要性

常時10人以上の労働者を使用する事業場で就業規則を改定する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合、これがない場合には労働者の過半数代表者の意見を聴き、意見書を添えて所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

そして、就業規則の整備と同じくらい重要なのが、全従業員に対する「周知」です。社内グループウェアへの掲載、書面での配付、説明会の実施などにより、従業員がいつでも内容を確認できる状態にしておく必要があります。

就業規則や社内ルールが従業員に十分周知されていない場合、後に懲戒処分を行った際に、その有効性が争われるリスクがあります。そのため、規定を作成・変更しただけで終わらせず、従業員にルールの内容と趣旨を丁寧に説明しておくことが大切です。

なお、常時10人未満の事業場であっても、録音・録画・撮影に関する社内ルールを明確にし、従業員へ周知しておくことは、トラブル予防の観点から有効です。

無断録音への対応策その2:いわゆる問題社員との面談・指導における注意点

実際に無断録音の疑いがある従業員と指導のための面談を行う際は、特に慎重な対応が求められます。

もっとも、録音されている疑いがあるというだけで、従業員を一方的に非難したり、所持品の確認を求めたりすることは適切ではありません。

会社としては、録音の有無にかかわらず、客観的な事実に基づき、冷静かつ適正に面談を進めることが重要です。
実際に録音されることを前提とした面談の進め方や、会社側が取るべき具体的な対応策について解説します。

大原則:「録音されている」可能性を意識して面談に臨む

面談の際は、相手のスマートフォンやICレコーダーによって会話が録音されている可能性を意識しておく必要があります。

もっとも、これは録音している従業員を警戒し、対立的な姿勢で面談に臨むという意味ではありません。録音の有無にかかわらず、第三者が聞いても適切と評価できるような、冷静で公平な態度を保つことが重要です。

感情的な叱責や不用意な発言を避け、面談の目的と指導内容を明確にしておくことが、後日の紛争を防ぐことにもつながります。

面談前に準備すべきこと

十分な準備をせずに面談を行うと、会社側の説明が曖昧になったり、指導の目的が相手に正確に伝わらなかったりすることがあります。有意義な面談を行うためには、事前に事実関係と面談の進め方を整理しておくことが重要です。

【客観的な事実と証拠の整理】

指導の対象となる行為について、遅刻の日時・回数、業務指示の内容、従業員の対応、成果物の状況などを時系列で整理します。あわせて、メール、業務システムの記録、勤怠データ、指示書、過去の面談記録など、客観的に確認できる資料を揃えておきます。「態度が悪い」「やる気がない」といった主観的で抽象的な評価だけで指導するのではなく、具体的な行為や事実を示したうえで、本人の説明を聞くことが重要です。

なお、資料の内容が正確であるか、本人以外の従業員や顧客の個人情報・秘密情報が必要以上に含まれていないかについても、あらかじめ確認しておきましょう。

【面談のゴール設定とシナリオの想定】

面談を始める前に、面談の目的を明確にしておきます。例えば、本人の認識や説明を確認すること、会社として問題と考えている点を伝えること、今後改善すべき事項や期限を明確にすることなどが考えられます。

面談の目的を「本人に事実を認めさせること」や「誓約書に署名させること」だけに設定すると、会社側の評価を一方的に押し付ける面談になりかねません。本人から異なる説明がされた場合や、新たな事実が判明した場合には、その場で結論を急がず、追加の調査や確認を行うことも必要です。想定される質問や反論をあらかじめ整理し、会社側の説明が一貫するよう準備しておくことも有効です。

面談中の具体的な言動と避けるべき行動

面談では、会社側の結論を一方的に伝えるだけでなく、本人の説明を聞きながら、相互の認識を確認することが重要です。

【複数名(上司と人事担当者など)で対応する】

重要な指導面談については、可能な限り、上司と人事・労務担当者など、会社側が複数名で対応することが考えられます。

複数名で対応することにより、面談内容について「言った・言わない」という争いが生じるリスクを抑えられるほか、1人が説明を担当し、もう1人が記録を担当することもできます。もっとも、大人数で従業員を取り囲むような態様になると、威圧的な面談と受け取られるおそれがあります。面談の目的や内容に応じて、参加人数や人選にも配慮する必要があります。

【感情的な叱責や人格否定は絶対に避ける】

相手が反発したり、会社側の説明に納得しなかったりした場合でも、声を荒らげたり、人格を否定したりする発言は避けなければなりません。

「人間性に問題がある」「会社を辞めろ」などの発言は、業務上必要な指導の範囲を超え、ハラスメントや退職強要と評価されるおそれがあります。
従業員に問題行動が認められる場合であっても、人格否定や過度な叱責が正当化されるわけではありません。指導は、問題となる具体的な行為と、今後求める改善内容に限定して行うことが重要です。

【客観的事実に基づき、具体的に指導する】

「何月何日にどのような指示を行い、それに対してどのような対応がされたのか」など、具体的な事実を示したうえで、本人の説明を求めます。そのうえで、会社として問題と考える理由、業務に生じた影響、今後改善してほしい事項を具体的に伝えます。
就業規則や服務規律に関係する行為である場合には、該当する規定を確認しながら説明することも有効です。ただし、規定の適用について争いがあり得る場合には、違反であると即断せず、本人の説明や関係資料を確認したうえで判断する必要があります。

また、本人からハラスメントや不適切な指導に関する申告があった場合には、当初予定していた指導面談とは切り分け、必要に応じて相談窓口や別の担当者による事実確認を行うことも検討しましょう。
ハラスメントについて相談したことや事実確認に協力したことを理由として、不利益な取扱いを行ってはなりません。

一方で、相談とは別個に確認された問題行動について、客観的な事実に基づき適正な指導を行うことまで妨げられるものではありません。両者を混同しないよう、問題となる事実と対応理由を明確にしておくことが重要です。

面談後の対応:面談記録の作成と共有

面談終了後は、できるだけ速やかに面談記録(議事録)を作成します。面談の日時、場所、出席者、面談の目的、会社側が説明した事項、本人の説明、確認された事項、今後の対応、改善を求める内容や期限などを記載しましょう。一言一句を再現することが難しい場合には、発言の趣旨が変わらないよう注意しながら、主要なやり取りを時系列で整理します。会社側にとって都合のよい内容だけでなく、本人の反論や説明も記録しておくことが重要です。

面談記録を本人に共有する場合には、内容に異なる認識があるときは、意見や訂正の申出を行うことができる旨を伝えることが望ましいでしょう。本人が記録への署名や押印を拒否した場合でも、それだけで本人の説明が不合理であると評価することはできません。共有した文書、送付メール、本人から提出された意見書などをあわせて保管しておきましょう。

【会社側が面談を録音する場合のメリットと注意点】

面談内容を正確に記録し、後日の認識の相違を防ぐため、会社側が面談を録音することも考えられます。その場合には、面談の開始時に、「本日の面談については、内容を正確に記録し、認識の相違を防ぐため、録音を行います」などと説明し、録音の目的を明らかにしておくことが望ましいでしょう。会社側が録音することにより、面談記録を正確に作成しやすくなるほか、後から会社側と従業員側の双方の発言内容を確認することができます。

もっとも、録音データには、従業員の個人情報やプライバシーに関する情報、社内の秘密情報などが含まれる可能性があります。録音の目的、利用範囲、閲覧できる者、保存期間、保管方法および削除方法をあらかじめ整理し、目的外利用や不必要な共有を避ける必要があります。

また、録音を拒否したことだけを理由として、従業員に不利益な評価をすることは慎重であるべきです。録音の必要性、面談の内容、社内規程、本人の意向などをふまえ、個別に対応を検討しましょう。

指導後も改善が見られない場合の段階的対応フロー

指導や面談を行っても改善が見られない場合には、直ちに重い懲戒処分や解雇に進むのではなく、問題行動の内容、程度、回数、業務への影響、本人の説明、これまでの指導状況などを整理し、事案に応じた対応を検討する必要があります。

以下の対応は、すべての事案で必ず同じ順序により実施しなければならないものではありません。就業規則、雇用契約、職務内容および個別の事情に応じた判断が必要です。

ステップ1:注意指導書・業務改善指示書の交付

口頭による指導だけでは改善事項が明確に伝わらない場合には、「注意指導書」や「業務改善指示書」などの書面を交付することが考えられます。書面には、問題となる具体的な行為、会社として改善を求める理由、求める改善内容、確認方法、改善期限などを記載します。

本人が受領を拒否した場合には、同席者の立会いのもとで交付を試みた経過を記録する、メールなど記録が残る方法で送付するといった対応を検討しましょう。

ステップ2:懲戒処分の検討(けん責・減給など)

指導後も同様の問題行動が繰り返される場合や、行為の内容が重大である場合には、就業規則の懲戒規定に基づく処分を検討することがあります。

懲戒処分には、就業規則上の根拠と周知が必要です。さらに、行為の性質・態様、結果、本人の説明、過去の処分例などをふまえ、処分に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえることが求められます。必ずしも、けん責、減給、出勤停止という順序で機械的に処分を重くしていけばよいわけではありません。また、既に懲戒処分を行った行為について、実質的に重ねて処分しないよう注意が必要です。

懲戒処分を検討する際には、就業規則、労働協約その他の社内手続を確認し、原則として本人に事実関係を確認し、弁明の機会を設ける必要があります。減給の制裁を行う場合には、労働基準法による金額の制限があることにも注意が必要です。

ステップ3:配置転換・降格等の検討

業務上の必要性があり、本人の職務適性、問題行動の内容、職場への影響などをふまえ、配置転換を検討することもあります。ただし、退職に追い込む目的で異動を命じる場合や、業務上の必要性に比して従業員に著しい不利益を与える場合には、権利の濫用と評価されるおそれがあります。

また、「降格」には、役職を解く場合、人事上の資格や等級を引き下げる場合、懲戒処分として行う場合などがあります。配置転換や降格を行う場合には、その法的性質を明確にしたうえで、業務上の必要性、就業規則等の根拠、本人が受ける不利益の程度などを慎重に検討する必要があります。

ステップ4:退職勧奨による合意退職の検討

雇用の継続が困難であると会社が判断した場合には、解雇の前に退職勧奨を検討することがあります。

「退職勧奨」は、会社が従業員に対して退職を提案し、話し合いによる合意退職を目指すものです。従業員には提案を拒否する自由があり、退職に応じる義務はありません。長時間にわたり執拗に退職を迫る、繰り返し面談を行う、威圧的な発言をする、退職に応じなければ不利益を与えると告げるなどの態様は、違法な退職強要と評価されるおそれがあります。

退職条件を提示する場合には、十分な検討時間を設け、本人が自由な意思に基づいて判断できるよう配慮します。合意に至った場合には、退職日、金銭の支払、貸与品の返還、秘密保持その他の条件を合意書に明記しておきましょう。

ステップ5:解雇の検討

指導、配置転換その他の対応を検討しても雇用の継続が困難である場合には、普通解雇または懲戒解雇を検討することがあります。

解雇が有効と認められるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。無断録音をしたことや、会社の指導に反論したことだけを理由として、直ちに解雇できるわけではありません。問題行動の内容・程度、業務への影響、指導や改善機会の有無、本人の対応、過去の事例との均衡、より軽い措置で対応できる可能性などを総合的に検討する必要があります。

また、有期労働契約の契約期間中に解雇する場合には、より厳格な要件が問題となります。実際に解雇を検討する場合には、事前に弁護士へ相談し、根拠資料や手続の適正性を十分に確認することが重要です。

無断録音トラブルを未然に防ぐための職場づくり

無断録音への対応は、就業規則の整備や指導面談の方法に限られません。従業員が会社の説明や人事評価に強い不安や不信感を抱いている場合には、後日の確認や証拠保全を目的として録音が行われることがあります。
録音行為を一律に問題視するだけではなく、その背景に職場内のコミュニケーションや相談体制の問題がないかを確認することも重要です。

風通しの良いコミュニケーションと信頼関係の構築

上司が部下と定期的な面談を行い、業務の進捗だけでなく、困りごとや業務上の負担について話を聞く機会を設けることは、問題の早期把握に役立ちます。ただし、定期面談を実施するだけで問題が解決するとは限りません。

従業員から指摘や相談があった場合に、その内容を適切に記録し、必要な確認や対応を行う仕組みを整えることが重要です。

ハラスメント相談窓口の形骸化を防ぐ

社内にハラスメントや職場トラブルに関する相談窓口があり、適切に対応する体制が整っていれば、問題が深刻化する前に会社が事情を把握できる可能性があります。

相談窓口の存在を十分に周知するとともに、相談者や関係者のプライバシーを保護し、相談や事実確認への協力を理由として不利益な取扱いを行わないことを明確にしておく必要があります。

また、相談があった場合には、相談者と行為者の双方から丁寧に事実確認を行い、確認された事実に応じて適切な対応と再発防止措置を講じることが重要です。

まとめ:冷静な対応と適正な手続で問題に向き合う

いわゆる問題社員による無断録音への対応では、就業規則や社内ルールを整備し、どのような録音行為や録音データの利用が問題となるのかを明確にしておくことが基本となります。

面談や指導にあたっては、録音されている可能性を意識しながらも、従業員を一方的に敵視するのではなく、客観的な事実に基づいて、冷静かつ具体的に説明することが重要です。また、指導後も改善がみられない場合には、問題行動の内容、本人の説明、業務への影響、これまでの指導状況などをふまえて、個別の事案に応じた対応を検討する必要があります。

無断録音には、職場秩序、情報管理、プライバシー保護の観点から問題となるものがある一方、従業員が自己の正当な権利利益を守るために録音を行う場合もあります。会社としては、録音行為そのものだけに注目するのではなく、その目的、態様、利用方法、業務への影響などを確認しながら、適切な労務対応と、従業員が安心して相談できる職場環境の整備を進めることが大切です

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弁護士法人シーライト

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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