副業・兼業の導入

1 ケース

Y広告会社では、副業・兼業は禁止されていた。しかし、近年の副業・兼業ブームに合わせて、Y広告会社でも副業・兼業を許可制で認める方向で調整がついた。もっとも、「副業や兼業で疲れてしまって本業に悪影響ではないか?」「労働時間の管理はどうなるのか?」「仮に、過労で心身に問題をきたした場合、誰が責任を負うのか?」といった懸念があった。

2 副業・兼業とは

副業・兼業とは、2つ以上の仕事を掛け持つことをいい、ここにいう「仕事」は、正社員、パートアルバイトはもちろん、個人事業主となって請負や委任といったかたちで行う場合も含まれています。

「収入を増やしたい」「自分が活躍できる場を広げたい」等の理由から、副業・兼業を希望する人が年々増加しています。こうした時流に合わせて副業・兼業を導入する際には、副業・兼業のメリット・デメリットに留意して、場合によっては就業規則を改訂する必要があります。

(1)副業・兼業のメリット

副業・兼業には次のようなメリットがあります。
・自己実現を追求できる
・所得が増加する
・離職しなくても別の仕事が可能となり、スキルや経験を得ることでキャリアアップできる
・異業種との交流を深めることができる

(2)副業・兼業のデメリット

これに対し、デメリットとしては、次のような場合が考えられます。

Y広告会社の社員Xは、ギャンブルで浪費してしまい、金銭に困って飲食店Zで土日も6時間程度アルバイトしていた。Xは、勤務中に居眠りすることもあった。

すなわち、
・社員が本業を十分にできなくなる
ということが指摘できます。

このほかにも、下記のデメリットが考えられます。
・副業・兼業の内容によっては、会社の信用を損なう
・企業秘密が漏洩する
・競業行為を行われて、会社が損失を被る
・長時間労働となる

このようなデメリットはありますが、副業・兼業を許可する際の対応でそのリスクは軽減できます。たとえば、副業・兼業を許可する際に、デメリットが顕在化したときには懲戒処分を課すと注意したり、こうした注意では足りない問題社員にはそもそも副業・兼業を許さないといった対応をしたりすることになります。

そのため、副業・兼業を導入する際には、デメリットが顕在化したときに備えて懲戒処分の規定を整備したり、逆に、問題のある社員の副業・兼業を不許可にしたりできるようにしておく必要があります。

3 副業・兼業を行う社員がいる場合の注意点

(1)労働時間管理

副業・兼業を行う社員がいる場合、労働時間に注意をする必要があります。なぜなら、労基法は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規程の適用については通算する」(38条1項)と定めており、次の例外にかかげる例外にあたる場合を除いて、事業主が異なっていたとしても労働時間が通算されることになるからです。

・副業・兼業についてそもそも労基法が適用されない場合
・労基法は適用されるが、労働時間規制が適用されない場合
(農業・畜産業・養蚕業・水産業,管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度)

この結果、たとえば、Y広告会社の社員Xが個人事業主となってコンサルタント事業を始めた場合には、労働時間を通算しなくてもよいことになりますが、Y広告会社の社員Xが、Z人材派遣会社で雇用されて労務に従事している場合には、労働時間が通算されることになります。

(2)健康管理

また、使用者は労働者が副業・兼業していたとしても、安全配慮義務を負うことに変わりありません。そのため、本業、副業・兼業をすべて含めたうえで、社員の心身に気を払う必要があります。

4 まとめ

副業・兼業は、いかにメリットを享受しつつ、デメリットが顕在しないようにするかというのがポイントになってきます。労働力不足の中小企業の場合、社員に副業・兼業を認めるだけではなく、副業・兼業の受け入れも含めて副業・兼業を導入するかを検討する必要があります。こうした際のルール作りも含めて、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

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弁護士法人シーライト

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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