問題社員から提起された解雇無効の労働審判について合意退職のスピード解決(2か月弱 )ができた事案
業種:建設業
相談内容・お困りの問題のキーワード:人事・労務、解雇、懲戒、問題社員、労働審判
担当弁護士:阿部貴之、小林玲生起
Contents
相談内容
命じた業務内容を拒否する(問題点①)、有望な若手社員に会社の誹謗中傷・不平不満を述べて退職するよう流言する(問題点②)などの問題社員Xを解雇した。
そうしたところ、Xが弁護士を立てて、解雇無効・解雇後の給与支払請求を行ってきた。
主な争点
会社の行った解雇は、有効か無効か(解雇権濫用に当たるか否か)。
弁護士の対応・解決内容
結論としては、Xに退職してもらうことができました。
本件では、上記問題点につき、Xと社長が複数回に渡り退職勧奨を含む話し合いを行いましたが、改善せず、やむを得ず解雇通知を出すこととなりました。そうしたところ、Xが弁護士を立てて、解雇無効などを主張してきたため、会社自身による解決は不可能とのことで、当事務所にご相談・ご依頼していただきました。
解雇は有効であるとして、上記Xの請求を拒否したところ、Xから労働審判が申し立てられました。
労働審判においては、会社がXに対して行った解雇が有効か否か、すなわち、解雇権の濫用に当たるか否かが主な争点となりました。そこで、当事務所では、
問題点①:命じた業務命令を拒否することについて
会社がXに行ってほしい業務(現場作業)の内容及び当該業務の重要性を詳細に説明したうえで、
・上記業務とXの希望する業務(書類作成業務や営業)に乖離があること
・過去の実績上、Xの希望する業務はXに適性がないこと
・それにも関わらず、Xは具体的な行動目標や改善案などがないこと
・Xの業務命令拒否が就業規則に定める懲戒事由に該当すること
などを具体的に主張立証していきました。
問題点②:有望な若手社員に会社の誹謗中傷・不平不満を述べて退職するよう流言することについて
会社の属する業界では、採用難が深刻で、特に若手の人手不足が課題であることを詳細に説明したうえで、
・当該若手社員は社長が縁故を辿ってやっとの思いで採用した有望な若手であること
・当該若手社員がXから退職するようそそのかされた時期は入社直後の大事な時期であったこと
・当該若手社員がXから言われた状況、内容、それを聞いた注文主の評価
などを丁寧に主張立証していきました。
解決内容
その結果、会社がXに対し解決金を支払うことを条件として、Xが合意退職する和解を成立させることができました。労働審判の第1回期日での、それも労働審判申立から2か月足らずの和解成立であったので、稀に見るスピード解決でした。
弁護士の所感・コメント
解雇について
日本法においては、解雇権濫用法理(労働契約法16条)により、労働者を簡単には解雇できないよう厳格に規制されています。
しかし、労働契約法16条をみても「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と書いてあるだけで、何が「客観的に合理的な理由」なのか、「社会通念上相当」なのか、一般の方には、全く読み取れないと思います。解雇権濫用法理は、判例・裁判例の蓄積や傾向、「勘所」といった不文の法的感覚を身に付けていないと、何が有効/無効なのかは判断がつかない難しい分野といってよいでしょう。
本件では、Xに弁護士が就いた段階でご依頼様が、「弁護士に任せるべき」との判断で、当事務所に迅速にご依頼いただいたことで、紛争を激化させることなく、極めて迅速に解決することができました。
労働審判について
「元従業員からの未払賃金・残業代・慰謝料の請求を労働審判で争い、請求額の約1/3で解決できた事例」で詳しく述べたように、会社側の労働審判対応は、極めてタイトなスケジュールとなります。
本件でもそうであったように、労働審判申立前からご依頼頂いていたことで、十分な準備期間でもって労働審判を進めることができ、それが結果的に、迅速な解決に繋がっているといえます。
労働紛争では、労働者側から労働審判が利用されることが多いので、労働者と揉めてしまった、揉めそうという場合には、早めに弁護士に相談するのがよいと思います。
解決内容全般について
本件の特徴は、一定の解決金を支払うことにはなりましたが、極めて迅速に退職を確定させることができた点です。
事案によっては「和解は拒否してトコトン争う!」ものもありますが、多くの案件では、解雇が有効か疑問のあるケースが多いのが実情です。そういったケースで、労働審判から訴訟へ移行し、1年、2年と長年争ったものの、裁判所から「解雇無効」との判断がなされてしまうと、その間、全く労務を提供してもらえていないにもかかわらず、給与相当分の支払い(いわゆる「バックペイ」)が必要になります。その間の弁護士費用も別途にかかってしまいます。
また、「解雇有効」と判断されると、法的には同一職場で同様に働くことができます。上記のような問題社員が復帰してくる社長のストレスは多大なものとなるでしょう。真面目に働いている他の従業員のモチベーション低下も懸念されるところであり、金銭には換算しがたい不利益が会社全体にかかってくると言わざるを得ません。
本件では、上記問題点①②の争点に対する十分な主張立証を基礎として、当事務所と社長が諸点について協議・熟慮した結果、解決金支払による合意退職という早期解決を図ることができました。
このような会社の中長期的な利害を図るためには、法的な観点が必要不可欠といえますから、労働紛争に直面した場合には、お早めに弁護士にご相談ください。
弁護士法人シーライト
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