継続雇用制度
Contents
1.継続雇用制度とは?
ケース
J運送のX社長は、少子高齢社会で人材不足に悩んでいた。そこで、経営者の知人に相談した。
【X社長】:「人材不足だというのに、新卒採用の募集をかけても全く応募がなくてまいっている。そっちではどうやって人材不足に対応しているんだ?」
【Y社長】:「ウチは、今まで60歳で定年としていた社員を継続雇用にすることである程度人材不足を解消したよ。なんと、国から高年齢雇用継続基本給付金ももらえることだし、使わない手はない。」
【X社長】:「(……そうか。ウチも60歳で定年としているが、やってみようかな。でも、継続雇用にするとして、①成績がよくない社員や健康状態がよくない社員も継続雇用しなければならないのだろうか?②賃金も前と同じ額を支払う必要があるのだろうか?職務内容も前と同じものでなければならないのだろうか?)」
不安を感じたX社長は顧問弁護士に相談することにした。
【Z弁護士】:「X社長のお悩みは、①誰を継続雇用とするのか、②どのような労働条件とするのかの2点にわけることができます。継続雇用制度の内容・背景もふまえて、①②についてご説明いたしますね。」
少子高齢化と公的年齢の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げに伴って、60歳以上の雇用確保の要請が高まり、高年齢者雇用安定法によって、以下の雇用確保措置を講じることが義務付けられました。
- 定年の引き上げ
- 継続雇用制度:継続雇用を希望する高齢者を定年後も引き続き雇用する
- 定年の廃止
このうち、大半の企業は人件費の抑制のために続雇用制度を選択しています。
2.誰を継続雇用するのか?
(1)希望者全員を継続雇用しなければならないのか?
(2)問題社員も継続雇用しなければならないのか?
3.どのような労働条件とするか
(1)労働条件を引き下げることはできるのか?
継続雇用後の労働条件は、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で自由に決めることができ、多くの場合、有期労働契約とした上で定年前の水準から下がる傾向にあります。 しかし、
- 高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであること
- 最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内であること
以上二つの条件を満たさなければいけません。
(2)どの程度職務内容を変更することや賃金を引き下げることが認められるのか?
【ア】「高年齢者雇用安定法の趣旨をふまえること」とは?
前述した通り、公的年齢の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことが継続雇用制度の背景にあります。そのため、雇用と年金との接続の役割を果たし得ないほど著しく低い水準である場合には、違法となることになります。 裁判例では、違法とされました。
【事例】
事務職の労働者に対して清掃業務のパート(1 日4時間、時給1000円)で再雇用した場合(名古屋高判平28・9・28労判1146号22頁)
事例:月収ベースで約4分の1になる短時間労働者の再雇用条件を提示した場合(福岡公判平29・9・7労判1167号49頁)
【イ】雇用に関するルールの範囲内とは?
特に重要なルールは、パートタイム・有期雇用労働法9条です。いわゆる同一労働同一賃金の原則に違反してはならないことが定められています。
- 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。
継続雇用制度では、多くの場合、定年退職後の継続雇用において職務内容やその変更の範囲等が変わらないまま、賃金の引き下げ等が行われており、同一労働同一賃金の原則に違反するのではないか?という問題があります。 この点に関しては、賃金と言っても、能率給、職務給……等さまざまであることから、個々の賃金項目の趣旨を個別に考慮して同一労働同一賃金の原則に違反するか決定されます。
たとえば、最高裁は、
- 従業員に対して休日以外は一日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給される手当を嘱託社員に支給しないのは不合理であって違法である(最判平30・6・1民集72巻2号202頁)
としました。
4.まとめ
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