同一労働同一賃金に関連した主たる法律の改正について

1 ケース

A・B・C・Dは、バブル崩壊後の景気が悪化した1993年から2005年までに高校・大学を卒業した。
幸いDはなんとか「正社員」として就職することができたが、A・B・Cは「正社員」としてはどこの企業にも入ることができず「非正社員」として就職した。「正社員」とは異なって「非正社員」は簡易な単純作業しか任されないため、A・B・Cはスキルが身につかず、現在においても「非正社員」として会社を転々としている。

2 正社員とは?非正社員とは?

・Aは、労働契約の期間に定めはなく、週5日、1日6時間勤務している。
・Bは、労働契約の期間に定めはなく、週4日、1日8時間勤務している。
・Cは、労働契約の期間が2年であって、週5日、1日8時間勤務している。
・Dは、労働契約の期間に定めはなく、週5日、1日8時間勤務している。

上記のA~Dのうち、いわゆる「正社員」はDだけになります。すなわち、労働契約の期間に定めがなく、フルタイムで働いている社員をいわゆる「正社員」といいます

AからCのように、契約期間に定めがある or 正社員よりも働く時間・日数が少ない社員等をいわゆる「非正社員」といいます

3 法改正の経緯

(1)正社員と非正社員の格差

一般的に、正社員は雇用が保証されているのに対して、非正社員は不況時に人材調整のために解雇されることになります。
また、賃金を含めた待遇面でも正社員が優遇されていますし、職業訓練も正社員を中心に行われます。こうした雇用慣行のなかでは、一度非正社員に陥ってしまうと正社員との格差が広がる一方になります。

(2)非正社員の増加

就職氷河期世代は、まさにその問題点が顕在化することになり、A・B・Cのように非正社員にならざるをえず、現在も非正社員のまま格差が広がっているという状況があります。
また、リーマンショックによる景気悪化があったために、氷河期世代とは別に非正社員が増えているという状況もあります。

(3)同一労働・同一賃金へ

同一労働・同一賃金に関連した法改正の問題関心は、正社員と非正社員の格差を是正することにあります。

この格差は、社会的な側面として、若い世代の結婚・出産へ悪影響を及ぼし少子化の原因になっていることが指摘されています。また、非正社員がコストの安い労働力として扱われることによって、経済成長の底上げを阻害する原因としても挙げられています。
そこで、同一労働・同一賃金に向けた法改正が行われました。

具体的には、パートタイム労働法、労働契約法等の法改正が行われました。この2つの法改正は、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(いわゆるパートタイム・有期雇用労働法)に引き継がれ、2020年4月1日(中小企業における適用は2021年4月1日から)に施行されました。

この法律の主要なポイントは、3点あります。
① 正社員とパートタイム・有期雇用労働者の間の処遇是正
② パートタイム・有期雇用労働者の待遇に関する説明義務の強化
③ 正社員の労働条件を切り下げる形で非正社員の労働条件を底上げすると、パートタイム・有期雇用労働法の趣旨に反した不利益変更であるとして無効になるおそれがあること

5 まとめ

パートタイム・有期雇用労働法は、2021年4月1日から中小企業にも適用されるので、上記①~③の法改正への対応は待ったなしの状況にあります。ぜひ当事務所にご相談ください。

 

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弁護士法人シーライト

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