解雇の種類について

1 社員を解雇したいが、どうすれば解雇できるのか?

①「勤務態度が不良な社員を解雇したい」
②「会社のお金を横領した社員を解雇したい」
③「経営が悪化しているからリストラを検討したい」

①②のような問題社員を解雇する際、いきなり解雇にふみきることはできません。いわゆる“解雇権制限法理”というものが形成されているので、解雇事由に合わせて適切な手続を踏む必要があります。

さらに、③新型コロナウィルスによる減収のために、リストラとして整理解雇を検討している経営者の方々は少なくないところです。ただし、純粋に「会社の経営が成り立たないから整理解雇する」という場合はそれほど多くなく、「経営が悪化しているから①②のような問題社員を解雇する」という場合が多いです。しかし、整理解雇の場面では他の解雇以上に注意する必要があります。

2 解雇の種類とは?

(1)普通解雇「勤務態度が不良な社員を解雇したい」

ア 普通解雇とは?

連絡がつかない、無断欠席が多い、会社の指示に従わないなど、社員の勤務態度や職務能力を理由に行われる解雇となります。

イ どういう場合に普通解雇できるか?

まずは「勤務成績・態度が不良で改善の見込みのない場合」には解雇するといった就業規則の定めが必要になります。就業規則の整備はお済みでしょうか?

そのうえで「勤務成績・態度」が不良である必要があります。訴訟になったときに立証できるように、人事評価は書面に残すといった措置を講じておかなければなりません。

さらに「改善の見込み」がないことが必要になります。
ここが日本の長期雇用制度におけるポイントです。日本では、スキルのない若者を雇ってOJTで能力をあげていくことが前提となっています。そのため「勤務成績・態度」が不良であることから直ちに解雇することはできません。

「何回も指導しても改善しなかった」「異動もしてみたがそれでも改善しなかった」という積み重ねがなければ、「改善の見込み」がないとはいえないことになります。どのような積み重ねがどれぐらい必要なのかということは、裁判実務上の相場できまっています。そのため、弁護士によるアドバイスが不可欠なところです。

ウ 普通解雇できないのに普通解雇したらどうなるか?

この場合、損害賠償しなければいけないことになります。社員側から「不当解雇」だと解雇した社員から訴訟や労働審判を提起されて、多額の賠償金を支払わなければならなくなったケースは少なくありません。

(2)懲戒解雇「会社のお金を横領した社員を解雇したい」

会社のお金を横領したり、刑事事件に該当するような案件を起こしてしまったりするなど、重大な違反行為をし、解雇されて相応しい場合を言います。

懲戒解雇の場合、予告を伴わず、退職金を不支給にしたり、減額したりすることが多いですが、退職金に関しては不支給にしていいのか、減額していいのかといった点が問題となります。「懲戒解雇にしたから退職金は支払わない」と単純な対応をした場合、後になって利息つきで金銭を支払わなければならないこともあります。

(3)整理解雇「経営が悪化しているからリストラを検討したい」

倒産を避けるためにリストラせざるを得ない等、経営上の理由により人員削減の手段として行われる解雇のことを言います。この場合は企業側の都合で実施され、社員に非がないということもあり、普通解雇や懲戒解雇よりもさらに厳格な要件が必要になります。具体的には以下の4つの要件が必要になります。

・会社の倒産危機等、客観的に見て解雇しなければならない必要性があること
・役員報酬削減したり、新規採用を取りやめたりする等、解雇を避ける為に企業努力が尽くすこと
・解雇対象者の選定が公平で合理的に行われていること
・”整理解雇”を実施するにあたり、説明や話し合いがされていること

上記のとおり、整理解雇のほうが普通解雇や懲戒解雇よりも条件が厳しくなっています。しかし、これを知らずに整理解雇を選んでしまう経営者の方がいます。
そのため、本来であれば普通解雇できたはずの問題社員も、整理解雇という形式を選んだために解雇できなくなったという場合もあります。

3 まとめ

解雇したいという場合、就業規則の整備、証拠を残すこと、指導や人事異動を通じて解雇をさけるべく積み重ねをしていたこと、どういった解雇の形式をとるかといった様々な局面で弁護士によるアドバイスが不可欠となります。
弁護士によるアドバイスがないまま解雇に踏み切ってしまうと、解雇が後に違法・無効となり、多額の損害賠償に応じなければならない場合すらあります。

当事務所では、訴訟対応ももちろん承っておりますが、解雇に踏み切る前の事前の対策も含めてアドバイスさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

 

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弁護士法人シーライト

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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