36協定について

1 ケース

X塾は、地域に根差した小規模の学習塾で、雇用している社員は、講師と事務スタッフを含めて5人で、労働組合は存在していない。

① X塾は「36協定」は不要だろうと思い、講師と事務スタッフそれぞれから口頭で同意を取って時間外労働・休日労働を行わせていた。

② 5人の社員はマラソン同好会をつくっていた。マラソン同好会は県外の大会に出ることもあって、Yがリーダーとしてホテルや大会の手配をしていた。
X塾は、従業員のリーダー的な存在であるYとの間で「36協定」を締結すればいいだろうと思い、従業員たちの意見を聞くことなく、Yを従業員代表として「36協定」を締結した。

2 36協定とは?

法律の仕組みとしては、原則的には時間外労働・休日労働を行わせることは労基法違反になります(労基法32条、35条)。
ただし、法が求めている手続を踏むことで適法に時間外労働・休日労働を行わせることができます。この手続は、当該事業場の過半数組合、過半数組合がいない場合には過半数代表者と労使協定を締結することです。この定めが労基法の36条に定められていることから「36協定」と呼ばれています。

3 36協定の締結

(1)内容としてどういったことを定めるべきか?

36協定の内容としては、以下の内容を記載しなければいけません。

・時間外・休日労働をさせる必要のある具体的な理由
・業務の種類
・1日および1日を超える一定の期間についての延長時間の限度
・有効期間

(2)36協定は誰と締結すればいいのか?

①の場合

労使協定は、過半数組合、過半数組合がない場合には過半数代表者と締結しなければいけません。
したがって、労働者全員から個別に同意を得ていたとしても、労基法が認める主体との間で協定を締結したとはいえません。

「個別の同意があるのであれば問題ないのではないか?」と思う方もいるかもしれませんが、労基法は、労働者が民主的に代表者を選出して36協定を締結することを求めています。そのため、個別の同意では足りないというこ とになります。

①は36協定のないまま時間外労働・休日労働を行わせていたことになるので、労基法違反ということになります。

②の場合

労働組合がない、過半数組合がない場合には、過半数代表者との間で労使協定を締結する必要があります。この過半数代表者は「当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要」(トーコロ事件・最二小判平成13年6月22日労判808号11頁)とされています。

②のように、マラソン同好会のリーダーをそのまま過半数代表として取り扱っているような場合には、過半数代表者が適法に選出されているとはいえないことになります。

どのような手続をすればいいのかというと、例えば36協定を締結する代表者を選出することや過半数代表者の情報について社内報を配布して社員に周知したうえで、投票や挙手等の多数決によって代表者を民主的に選出するといったことが必要があります。

4 まとめ

時間外労働・休日労働は、他社でも許されているからと思って適切な手続を踏んでいないと労基法違反になる可能性があります。
36協定に関して労基法違反がないようにするのはもちろん、時間外労働・休日労働全般についてご相談を承っていますので、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

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弁護士法人シーライト

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