団体交渉・労働組合対策について

【今回のケース】
経営悪化がつづいていたことから、先月整理解雇を行ったところ、労働組合から団体交渉に関する書面が届きました。内容は「団体交渉の場所を労働組合の事務所として、整理解雇の撤回を求めるべく団体交渉を行いたい」とのことでした。
これには応じなければならないのでしょうか?

1 労働組合・団体交渉とは?

団体交渉は、簡単に言うと、交渉力の弱い労働者が労働組合として力をあわせて、使用者との間で労働条件について交渉することをいいます。書面で団体交渉を申し入れるのが一般的です。

 

 

2 団体交渉に応じるべきか?

今回のケースのような書面が届いた場合、経営者としてはどう対応すべきでしょうか?
団体交渉を申し入れられた場合、団体交渉に応じるか否かをまず判断する必要があります。仮に、団体交渉に応じなければならないのに、団体交渉を拒否した場合には、不当労働行為として労働委員会から是正命令が出たり、労働組合から損害賠償請求されたりするリスクがあります。

3 どこまで対応しなければいけないのか?

団体交渉に応じる義務はありますが、交渉事項について合意しなければならないということはありません。ただし、使用者は「誠実交渉義務」というものを負っています。そのため、使用者の主張を具体的に説明したり、それを根拠づける事実や資料を示したり、組合の主張に対して根拠や資料を示して反論することが必要です。
このケースの場合、会社の財務状況が悪化していることや、希望退職者を募集したこと等の資料を提示して、説明しなければいけません。ほかにも、残業代請求やハラスメント問題等も団体交渉の議題となることがあります。

4 議事録を作成すべきか?

団体交渉を行うときには、言った言わないの水掛け論を防止するために、議事録を作成しましょう。
議事録の作成では、労使双方共通の議事録を作成しようとすると、議事録の作成自体で争いが生じることありますが、労使それぞれで議事録を作成しましょう。

5 録音・録画

(1)無断で録音・録画できるか?

一般論としては、仮に、相手方の了承を得ることなく録音・録画していたとしても、当該録音・録画は原則として証拠として用いることができます(東京高裁昭和52年7月15日判決)。

ただし、証拠として用いることができることと、不当労働行為にあたるかどうかは別論となります。
たとえば、録音・録画の可否も労使の協議にゆだねられているので、録音・録画をあえて禁止する場合があります。
このような場合に、無断録音・録画を行うと誠実交渉義務違反に違反したとされる可能性があります。

(2)録音・録画はどうすべきか?

録音・録画されている当事者がわかっていると、冷静に議論するようになるという効果があります。そこで、録音・録画する際には、無断録音・録画ではなく、事前にその旨組合側に対して申し入れておくほうがいいと言えます。

6 弁護士に依頼するメリット

このケースの場合「労働組合の事務所に出向いてまで団体交渉に応じなければ、会社の事務所で団体交渉をするのではダメなのか?」といった疑問がわくかと思います。
ネットにはさまざまな情報があふれていますが、誤った情報や一般論しか記載されていないこともあります。また、誠実交渉義務を尽くすためには、どのような資料が必要で、何を説明しなければいけないのかについては、法律の専門知識がないと判別がつきません。

正確な情報、具体的なケースに応じたアドバイスを受けるためには、弁護士に実際に相談することが不可欠です。団体交渉の申し出があったというときには、お早めに当事務所にご相談ください。

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弁護士法人シーライト

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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